退職予定日まで あと6ヶ月    上司に退職を申し出る

 転職しようと心に決めて、転職サイトに登録し、これは!と思う就職先をみつけた。

そこで働く姿を思い浮かべ、必要なスキルが備わっているのか悩んだりしながら、普段の業務を続けている。一歩踏み出してしまうことによって、クライエントとの関係の終結し、職場の仲間たちとの人間関係の変化する。他の人からどうみられるのか、自分がどう受け止めていけるだろうかと思う。漠然とした不安に心が満たされながらも、『現状ではないところに行きたい』思いに突き動かされて、履歴書、職務経歴書を仕上げ、応募に「クリック」したところから、会社の「説明会」に参加、会社から電話が来て「面接」へと進んだ。

 いろいろ考えたとして、考えているだけでは変わらない。行動してみれば、何か次のことが見えるだろう。会社から望まれなければ、今の職場にいるしかない。そうなるのなら、また時間をかけて次のことを考えるよりない。ひとまず、『現状ではないところに行く』ことができなかったときのための心づもりとして自分にいい聞かせている。

 

 結果、面接では、自分の予測通りの会社の状況を確認し、歓迎されている感触を得て、いよいよ今の仕事の終結に取り組むことにした。

 

 自分が、今の仕事を終わりにするとしても、周囲は終われない。仲間の活動と、患者の生活は続いていく。これまで一緒に働いてきた仲間、必要以上の負担をかけたくないし、いっしょに育ってきた仲間の成長を妨げたくはない、という思っている。

 自分が次に進むこと、と、現職場が機能を果たし続けること、両立を、完全にではなくても目指したい。

 

 わたしはこれまで20数年前に2回、転職をしている。一度目は新卒で1年後だったので、やっとさせてもらえた手伝い程度の仕事をもとにお戻しする程度のことだった。2度目は、ひとり職場に近い状態だったので、引き止めにもあい、後継が来るまでと時期を引き延ばされそうになりながら、思いつくすべての申し送りを書いて出てきた。自発的に望んだ転職でもなく、世話になった人に強く推されて始まったことだったので、後ろ髪ひかれる思いばかりであったが、「辞める人がそのあとのことを考えても仕方がない。なんとかなるものだ」と言ってくれる人もいた。

 

 今の仕事に就いてから、10年以上経って産休に入らせてもらったときは、妊娠がわかってから出産までの時間があるわけなので、それなりに準備期間があった。わたしは十分に準備できたつもりでいた。周りも、「辞めるわけじゃないから何かあれば連絡するから」と言ってくれたが、実際は、「大変だった」そうで、安心して出産にあたらせようと気遣って課題や困難が聞かされることはなく休みを過ごさせてもらった。

 

本格復帰から3年。

 わたし以外の誰かが辞めることになっても「なんとかするしかない」思ってやってきたし、「なんとかなってきた」と仲間と振り返ることもあった。「辞めた後のことは、後の人が考えることであって辞める人が考えることではない」と思ってきたし、仲間ともそれを分かち合ってきた。わたしが辞めたとしてもそうなってくれる、自分がいなければ、何かしなければという考えに囚われるのは驕りだろう、と思いつつ、自分に言い聞かせたが、果たして本当にそうだろうか?という問いが、自分の中の別のところから湧いている。

 だからといって、『現状ではないところに行く』思いはとり消す気はないし、自分の思いも、もう後戻りできない。

 

 せめて今、できることがあるとしたら、自分が辞めるときの準備を始めることをお願いするよりないな、と思った。

 退職は、1か月前にいえば十分なのだろうか。わたしの場合「たぶんそれではだめ」な気がした。幾たび考えても「たぶんそれではだめ」な気がするので、具体的な理由は抜きにして感覚に従うことにした。譲れないと思った。無茶な話かもしれないがそれでだめならそれまでだ、今の仕事を続けて次のチャンスを狙うしかないと思って、面接の場でも6ヶ月先の就労を条件として伝えようと思った。面接を1ヶ月後に予定して、上司に退職の意向を伝えた。